ドイツのピアノ教育見聞録

ピアノのレッスンを通して覗いたドイツ事情と試行錯誤の日々の記録。

仕事納め

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発表会も無事終了した!

収容人数100名ほどのホールで、小一時間のプログラムだ。

ホールの壁には普段から、壁いっぱいの大きさの聖母子像画が掛かり、おまけに水色の棚にはKrippeキリスト降誕劇の場面を模した人形が待降節の期間中、特別展示されている。

クリスマスの駄目押しだ。

直前のリハーサルのために、私は1時間早めに待機した。

リハーサルは参加自由。

ホールに到着した順に、軽くグランドピアノの鍵盤の感触を確かめる。

プログラムは私の手作りで、日本のようなお花の飾り付けもなければ、記念品もない。

写真も各自で撮ってもらう。

一回の発表会について生徒の保護者にかかる特別費用はゼロだ。

会場代は市の負担だが、市立博物館内のホールなので、開館時間内に終了すればただということになる。

生徒達は、ほぼ普段着で登場する。

小学生の女の子たちが少しおしゃれしている程度だ。

日本の発表会に比べると、とても簡単なのだろう。

昔、私が子供の頃に経験した発表会は、もっと大変だったような気がする。

確か、発表会の予行演習にわざわざ1日かけて先生のお宅にお邪魔した記憶がある。

次回は7月の予定だ。

さてめでたく仕事納めだ!

食料も買い込んで、これから12月26日まで買い物できなくても困らない。

12月24日は半日だけお店は開いているが、スーパーに行っても売り切れ状態で、必要なものは何も手に入らないのがドイツのクリスマス直前お買い物事情だ。

日曜日は当然お店は休みだ。

やったー、今年は間に合った!

 

ドイツ手作りライフ 其の三

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クリスマス4週間前は、Advent待降節と呼ばれる。

ドイツでの師走にあたる時期だ。

クリスマスを迎える準備が始まり、とにかく全てが慌ただしい。

そんな中、ドイツ人は家庭でのお菓子作りに余念がない。

Plätzchen プレツヒェンと呼ばれる焼き菓子、簡単に言えばクッキーなのだけれど、この待降節の時期に焼かれるものは伝統的に種類が決まっているらしく、クッキーの直訳語のKekseケクセとは呼ばれないらしい。

調べてみると、日本語に訳すと「クリスマス焼き菓子」の一種がプレツヒェンだ。

あとは、最近日本でも食べられるシュトレン。

英語のジンジャーブレッドは、ドイツ語ではレープクーヘンLebkuchen、これもクリスマス焼き菓子だそう。

日本のおせち料理のように、各家庭に自慢のレシピがあり、ちょっとしたプレゼントに手作りのプレツヒェンというのがこの時期の定番だ。

ドイツ人は、手作りが大好きだ。

人気のケーキ屋さんのお菓子より、手作りのものを重宝がる。

私もクリスマスプレゼントに、生徒達から手作りプレツヒェンを頂いた。

作るのは女性だけではないところがすごい。写真手前右は、25歳の男性作。

「いつからどんだけ作ってんの?」

プレツヒェンは既製品ももちろん売っている。

昔は既製品の方が好きだったのに、しかし何故か今は手作りの方が味わいがあり、美味しいと感じるようになってきた。

滞独年月と関係あるのかな?

ところで、しかし翻訳って難しい。

クリスマス焼き菓子って、昔ディッケンズの子供向けに編集された小説に訳注として書いてあったかも。

当時は未知のモノであった。

前記事で私は「クリスマスソング」と書いていたものも、「クリスマスキャロル」と書くべきだったのかなー?

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古今クリスマスソング事情

EちゃんLちゃん姉妹が、お家にある古いドイツのクリスマスソングのピアノ曲集を持って来てくれた。

彼女らのお父さんが昔ピアノを習っていた当時の楽譜だ。

ドイツの出版社の楽譜で、ドイツのクリスマスソングとはっきりと表紙に書いてある。

では中を拝見してみよう。

思った通り、Jingle Bellsジングルベルは入っていない。

We wish you a Merry Christmasもない。

英語の歌は1つもなく、全てドイツ語の歌だ。

定番「聖しこの夜」はしっかり入っている。

前記事でも紹介したニコラウスの日を楽しみに待つ歌 Lasst uns froh und munter seinもある。

しかし、知らない歌の何と多いことか!

年配者は知っているのだろうけれど、最近の幼稚園では絶対に歌われていない気がする。

私が教材として使用している初心者用クリスマス曲集は当然だけれど最近の出版物で、モダンな曲も入っているが、ドイツの伝統的な曲も何曲かは必ず入っている。

その中には14世紀から伝承されている曲や、宗教改革で有名なマルティンルターが作詞した歌もある。

しかし、子供達はそれらの歌をあまりよく知らないようだ。

まあこういう現象はドイツだけに限ったことではないのだろうが、何だかとても残念だ。

さて、ドイツ三大Bの一人、ヨハネスブラームスは、「Joseph, lieber Joseph mein 親愛なる私のヨゼフ」という、14世紀のテキストに15世紀ごろメロディがつけられたクリスマスソングに着想を得て、女声とチェロとピアノのための「聖なる子守唄 Geistliches Wiegenlied Op.91-2」を作曲している。

私は昨年のとあるクリスマスチャリティコンサートで、この曲を演奏する機会に恵まれた。

あのブラームスも子供の頃のピアノのレッスンでこの曲を練習したかは知らないけれど、子供の頃から慣れ親しんできたこのメロディにインスピレーションを受けたのかと考えると、最近の子供達がこの歌を知らないまま大人になるのは文化的損失だ!

と考えた私は、今年のクリスマスには、初心者みんなに、子供達の国籍も宗教も問わず、ひたすらこの曲を宿題に出し続けたのである。

😂🤣😂🤣😂🤣😂🤣😂🤣😂🤣

 

クリスマスパーティー

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今日は音楽学校のクリスマスパーティーに参加した。

こちらではクリスマスパーティーというのだが、賛美歌を歌うわけでもお祈りするわけでもなし、どう考えても忘年会という方がぴったりだ。

パーティーは学校内の一室で行われ、参加は自由だ。

グリューワインやビール、クリスマスシーズンには欠かせないレープクーヘンやクッキーの他、校長からピザの差し入れがある。

飲み物やおつまみより、同僚同士のおしゃべりがメインだ。

日本のように会費を徴収するグルメな忘年会を企画しても、きっと誰も参加しないだろうな。

ドイツ人て、そういうところはケチなのだ。

今日は新しい同僚と初めて話す機会があった。

彼はウクライナ出身で、ドイツの音楽大学を出たばかりの若手だ。

26歳かぁ、へぇー、と思った後ガーンと衝撃を受けた。

娘とほとんど同い年か!

😱😱😱😱😱😱😱😱😱😱

ここは毎年新卒が採用されるような職場ではないから、こういう状況に対する免疫がないみたい。

他愛もない世間話の後、クリスマス休暇はウクライナで過ごすの?と聞いてみた。

いや、ドイツで過ごすよ、という答え。

故郷は紛争地帯なので帰れる状況にないと言う。

クリスマスって何だろう。

よく、本場のクリスマスって素敵でしょうねというコメントをもらう。

日本でもクリスマスにはパーティーがあり、サンタがやってくるし、プレゼントも貰える。

今は宗教的見解は抜きにして話をしよう。

最近ではクリスマスマーケットも各地に登場しているらしい。

確かに一見本場のクリスマスに近づいているようだ。

しかしそれらはあくまでクリスマスの本質に付随するものでしかない。

欧米人にとってのクリスマスとは、何をおいても「家に帰ること」だ。

故郷に帰ってこそのクリスマス。

私も留学生時代を思い出した。

当時のクリスマスの想い出は、異邦人としての寂しさと孤独感なしには語れない。

しかし私の場合は家が遠すぎただけだったのがまだ幸いだったんだな。

同僚の具体的なクリスマスの予定は聞かなかった。

みんないろんな想いを抱えているんだな。


コンサート 12月12日18:30

ピアノ連弾の演奏会が終わった。

私が住む市の「水曜日のクラシック」シリーズに、毎年恒例行事のように参加させてもらっている。

今年から半民営のような形態になったらしいけれど、今までと同様に毎週水曜日の夜6時半から1時間ほど、無料でクラシックのコンサートが楽しめる企画だ。

地元のオーケストラのメンバーなどを中心に若手からベテランまで、毎週様々なプロの演奏家が登場する。

広報から会場設営、プログラム作成に本番での進行まで、全て市の職員の方のお世話になるので、出演者は演奏だけに集中できる。

会場自体は収容人数100人程と決して大きくはないが、演奏者と聴衆の距離がかなり近いので、演奏後には聴衆の方から直接お話に来て下さったり、質問を浴びせられたり、聴衆の皆さんも臨場感を楽しんでおられるようだ。

開演前に客席を覗いてみて、私と面識のない方々がたくさん聴きに来て下さっているのを見ると、感謝の気持ちでいっぱいになる。

毎年来てくださる方も何人かいらっしゃるような気がする。

今日も舞台に立てることに感謝して、私自身が楽しんで演奏できますようにと呟いてから、一歩踏み出した。

 

プーランク作曲 「4手のためのソナタ」

l    前奏曲

II   田舎風に

III フィナーレ

 

ドビュッシー作曲「6つの古代碑銘」

1  夏の風の神、パンに祈るために

2 無名の墓のために

3 夜が幸いであるために

4 クロタルを持つ舞姫のために

5 エジプト女のために

6 朝の雨に感謝するために

 

ラヴェル作曲「ラ ヴァルス」

 

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ニコラウス

毎日毎日ジングルベル漬け。

しかも3通りのバリエーション。

まだ3週間これが続くのか〜!

ところで12月6日はニコラウスの日だ。

ドイツでは、この日に聖ニコラウスが良い子のところにプレゼントを持ってくる。

昨日Lちゃんが、「ブーツを綺麗にして寝なきゃ。」と言っていた。

朝起きたらニコラウスからのプレゼントがブーツの中にちゃんと入っていたかしら?

このニコラウスの日を楽しみに待つ歌、

Lasst uns froh und munter sein

が、ジングルベルと並んで一二を争う人気のクリスマスソング。

今年ももう何回歌ったことか!

でも8分音符の導入にも使えるからうんざりもできないな。

ところで、ニコラウスの付き人がクネヒトルプレヒト。

シューマンのユーゲントアルバムでおなじみだ。

クネヒトルプレヒトは、悪い子にお仕置きするためにやってくるドイツ版なまはげ。

しかし私はバイエルンで見たことがない。

ここにはいないのだろうか?

ともあれみんな、数年後にはクネヒトルプレヒトが弾けるように頑張って欲しいわ〜。



先生は訛ってます(笑)!

ギムナジウムでの新入五年生の授業を覗いてみよう。

五年生は大体みんな緊張してやってくる。

新しい学校生活、初めて習う教科に加えて、先生が東洋人!

そりゃあ緊張するだろうよ。

目に見えて外国人だもんね。

最近でこそ外国人が田舎にも増えたとはいえ、十年前に私が初めて田舎のギムナジウムに赴任した当時は、この子たちは東洋人を生まれて初めて見るんじゃないかと思ったっけ。

多分中華料理屋にも一度も行ったことないんだろうな。

何しろクラス全員が休み時間になったというのに私に視線が釘付けという出来事があったから。

私も自分のドイツ語が通じるか思いっきり緊張していたのを思い出す。

採用された時、校長先生のところで「バイエルン州の為に働きます」とかなんとか、そんな感じの宣誓式をしたものだから、尚更プレッシャー。

しかし習うより慣れろ、隣の部屋のロシア人の先生の訛りがすごくてレッスンで何言ってるのかよくわからないと言う生徒がいたから、私も気にせず頑張った(笑)。

これってしかし、凄い状況だな😆。

さて授業。

教師はまず、それぞれの生徒のレベルを把握し、適切な課題を各々の生徒に与えるところから始めていく。

既にレッスンを受けている生徒は当然それなりのレベルに見合った曲を課題として与えるのが定石だ。

全くの初心者には、まずは教材を購入してもらうことになる。

教材に関しては、学校指定のものが存在しない。

各先生がそれぞれのやり方で一番いいと思う教材を指定する。

この辺りの考え方が日本と違って非常に面白い。

先生個人の裁量に全て任されているけれど、目指すところは同じはず。

登山に例えると、受け持ちの先生の好みに合ったルートを辿って頂上を目指すようなものだ。

ギムナジウムでの初心者を対象にした教材について、私が見聞した範囲で紹介していきたい。