ドイツのピアノ教育見聞録

ドイツの音楽学校、音楽系ギムナジウム並びに大学で教鞭を執っています。試行錯誤の日々の記録。

お国はどちら?

私はドイツに住んで、ドイツの学校及び大学で働いていると書いた。

そして、ドイツ人の子供たちは、という表現もよく使う。

しかし厳密に言うと、私が教えているのはドイツ人の生徒または学生だけではない。

ざっと見渡したところ、大半はドイツ人だが、その他、フランス、イタリア、オーストリア、ロシア、カザフスタン、ルーマニア、ウクライナ、マケドニア、アルバニア、アラブ、ヴェトナム、モンゴル、中国等、彼らのバックグラウンドは実に様々だ。

一昔前まではドイツ人しか住んでいないと思われても仕方なかった保守的な田舎町が、急速に多様化している。

ドイツの移民難民政策も無関係ではないだろう。

そして同僚たちも実に国際色豊かだ。

日本人を始め、ロシア、グルジア、イギリス、カナダ、アメリカ、ハンガリー、アルゼンチン、トルコ等々。

異なる地域出身の人間同士が、ドイツ語と音楽でコミュニケーション取る、そんな真っ只中にドップリとはまり込んでいる。



レッスンはいつから始めるべきか?

ドイツでは、子供が小学校に上がってから楽器の個人レッスンに通わせるのが一般的だ。

なぜか?

私の勝手な憶測だが、一年生になって初めて学校でアルファベットを習うからである。

ドイツ語でドレミはCDE(ツェーデーエー)だ。

ドレミファソラシ、即ちCDEFGAHの7文字を習ってから音楽学校に通わせるべきだと、ドイツ人は考えるらしい。


これが日本人、又はアジア系出身者には、とても遅いスタートに感じられる。

アジアの国々では、早期教育が盛んだ。

そして何より、アジア系の子供たちは指先がとても器用だ。

これは、アジアの国々では子供の頃からお箸を使って食事をするからに違いない。

学術的な裏付けはない。あくまで私の個人的な持論だ。


ドイツ人は、子供に早期教育を受けさせようとは考えない。

それどころか、子供は子供らしく伸び伸びと育てたいと思っているようだ。

習い事は早くて一年生で十分らしい。


私自身は、早期教育は当然だと考えていた。

娘も幼稚園児の時に、ピアノを習い始めた。

しかし、私自身がドイツの小学一年生にピアノを教え初めて以来、その考え方が少し変わった。


アジア系の子供たちは、親に連れられてレッスンにやってくる。

しかし、ドイツ人の子供たちは、親を伴ってレッスンにやってくる。

そう、ドイツ人の子供たちは、自分が習いたいからここに来るのだと言う確固たる意思がある。

したがって、宿題も自分で責任を持ってやる。親も、子供が自発的に練習しようと思わないと意味がないと考える。

練習しないでレッスンに行って先生に怒られても、それは子供自身の責任であり、子供自身が経験を通して学んでいくべきだというのが、ドイツ式家庭教育の方針だ。

それに比べると、アジア系の子供たちは、残念ながら親に怒られて練習する子が大変多い。

残念ながら、初期の段階では子供の自主性はあまり感じられない。

しかし、早いうちに怒られながらもそれなりに上達しているわけだから、コンクール等の準備には非常に有利だ。


どちらが良いのかは、誰にもわからない。

どんな始め方であっても、将来いつの日にかピアノが弾けて楽しいと思えたら、それで良いのだろう。



クールジャパン

今年度より、ドイツ人大学生M君が私のところでレッスンを受けることになった。

彼はもう何年もピアノを習っているので、かなり難易度の高い曲が弾ける。

初めてのレッスンでは緊張した面持ちで、自分の好きな曲を演奏してくれた。

なんと、久石譲作曲の「千と千尋の物語」からの一曲だ。

彼は大の日本アニメファンだ。日本にも行ったことがあるという。

オタクという言葉のない時代からアニメファンだった私は狂喜乱舞した。

きっかけはどうあれ、日本を訪れ、その文化をもっと知りたいと思ってくれる外国人がもっと沢山増えますように。

来週からは、「Angel beats!」のテーマを練習したいらしい。

最近はアニメから遠ざかっていた私も、M君から大いに刺激をもらえそうな予感がする。

所変われば

久々に再会した生徒達。


Sちゃんは、一家4人で日本旅行を満喫してきた。

私の出身地、某古都へも足を運んでいる。

「楽しかった。日本が大好き!」と言ってくれると、本当に嬉しい。


L君は、ドイツ生まれでドイツ育ちだが、彼のご両親は双方ともに、某国出身である。

彼らは夏休み6週間たっぷりと、祖国に帰省した。

L君のお母さんは、帰省中もL君にピアノの練習を続けさせたかった。

しかし、お母さんの実家にはピアノがない。

そこで、おじいちゃんの計らいで、地元の音楽学校で毎日ピアノのレッスンを受け、練習できる運びとなった。

L君は、自分の楽譜を持参して現地でのレッスンに臨んだ。

バッハ、モーツアルト、シューマン、ショパンなどの所謂大作曲家の名曲を集めた、ドイツのピアノの先生がレッスンでよく使用する人気の曲集である。

その本を一目見た現地の先生は、それを「くそみそ」にこき下ろしたそうだ。

( 某国語→ドイツ語→日本語に訳しているため、鉤括弧でくくっておいた。)

「こんな曲は、某国では6歳児が軽々と弾きこなすレベル」なんだとか。

ちなみにL君は10歳だ。

6歳児、小学一年生の生徒がベートーベンのソナタやシューマンのトロイメライ、ショパンのマズルカ等を弾きこなしてくれたら、私は超うれしいんだけど。

「しかも、こんな風に弾かないといけないって言われたんだ!」と、L君がとったポーズは、肩を怒らせ、肘を持ち上げた、見たこともないものだった。

「先生はいつも大声で怒鳴ってるんだ。だから僕は、一週間でやめちゃったよ。その後ちっとも練習してないんだ!」

うんいいよ、君はピアノよりももっと大事な経験をいっぱいしてきたはずだから。

所変わればピアノの指導法も変わる、という一例としておこう。





レッスン禁止?

新学年度早々に、校長から緊急連絡があった。

ある生徒に対するレッスン禁止令だ。

昨年度の授業料が滞納されているので、その生徒が来てもレッスンしてはいけないというお達しだ。

私の勤めている音楽学校は、市立である。

市からの多大な公的資金で経営が援助されている。

生徒一人に掛かる必要経費の半額は、公的資金で賄われている。

親が払う授業料とは、必要経費の半分でしかない。

複数の子供をレッスンに通わせる家庭には、割引制度が導入される。

しかも、生活保護を受給している家庭の場合は、授業料全額免除される。

簡単に言えば、レッスン代がとてつもなく安いのだ。

今回の授業料滞納というのは、非常に珍しいケースだ。

さて、一体どうなるのだろうと校長からの連絡を待っている間に、ふと、昔のことを思い出した。

以前自宅でレッスンしていた生徒に、お月謝を踏み倒されたという苦い経験だ。


そうこうするうちに、その生徒の昨年度の授業料は無事に振り込まれ、新年度のレッスンをスタートさせることができた。

授業以外の雑事に煩わされないで済むという環境は、なんて有難いのだろう。

授業料の取立てに、税金が投入されたのだ。

音楽家も音楽教師も、霞を食っては生きていけないのだからね。








ドイツ式職場での誕生日の祝い方

今日は同僚Aさんの誕生日だ。

音楽学校の職員室の机の上には、Aさんからの手作りケーキが差し入れられていた。

そう、ドイツでは、お誕生日を迎えた本人が、他の人たちを招待するのが一般的だ。

日本とは正反対だ。

職場にケーキの差し入れがあると、今日は誰かの誕生日だとすぐにわかる。

以前、全体会議の日に誕生日を迎えた同僚がいた。彼女は大きなケーキを2つ焼いて持ってきた。

ちなみに、お誕生日ケーキが手作りであるというのは、ドイツ人にとっては絶対に譲れない大事なポイントだ。

即興で歌われるHappy Birthday のメロディーが多声部で豊かにハモっているのを聞く度、みんな自分の仕事が好きなんだなぁって、微笑ましい気分になる。




豊かな人生を送るために

ドイツの子供達は、学校の授業の後に、たくさんの習い事の予定がある。

水泳、体操、テニス、サッカー、バレエ、乗馬、社交ダンス、アイススケートにアイスホッケーなどのスポーツと、楽器や合唱などの音楽のレッスンを1週間の予定に組み込むのが一般的だ。

スポーツのトレーニングは、大抵週3回くらい予定されているものも多い。

学校の宿題が沢山あっても、あるいは試験前で忙しくても、よほど高学年の生徒でない限り、きちんと習い事に行くように、親が指導する。

学校の勉強だけが人生ではない、趣味を持つことは人生を豊かにすることだという哲学がある。


今日はドラッグストアで玄米酢を発見!

私の人生も少し豊かになった(笑)。

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