ドイツのピアノ教育見聞録

ピアノのレッスンを通して覗いたドイツ事情と試行錯誤の日々の記録。

夏休み中の特別お仕事

ドイツでは夏休みは6週間ある。

この夏休みに、例年にはない特別な仕事が発生した。

我らが音楽学校がグランドピアノを一台購入することになり、ピアノの先生たちで色々な楽器を品定めに出かけることになったのだ。

出かける先は、取り敢えずミュンヘンだ。

なぜかというと、そこはやはりバイエルン州都、楽器店の数が多い。

今回限られた予算内と時間内で学校でのレッスンに一番適している楽器を選ぶには、効率良く出来るだけ多くの楽器に触れてみたいからだ。

ということでミュンヘンに遠足いや視察に行ったのが7月末。

同僚5人でミュンヘン内を駆け回った。

グランドピアノをお買物って、流石にそうしょっちゅう行くわけでない。

一件の楽器店だけで既に何種類ものメーカーのグランドピアノを指弾する。

ヤマハにベヒシュタイン、スタインウェイからファツィオリ。

自分で弾きながらうっとり夢見心地。

いや自分の主観で選んじゃダメだ。

今回は5人のプロが同行したので、同僚の指弾を聴きながら客観的に各メーカーのグランドピアノの長所短所を聴き比べるという、滅多にない貴重な機会に恵まれることとなった。

ミュンヘン楽器店視察の結果、興味深い結論が出た。

予算は残念ながらとても限られているのだが、その範囲内で学校でのレッスン用にグランドピアノをお買物するならば、ウィルヘルムシュタインウェグWilhelm Steinwegというメーカーのグランドピアノが一番良いという見解に5人の同僚全員一致で到達したのだ。

小柄ながら丸くて柔らかく豊かに響く音。

聞くところによると、このメーカーはまだ新しく、アップライトに続いて最近やっとグランドピアノが市場に出回ってきたところだとか。

実は私の知り合いがここのメーカーのアップライトを購入していたので、グランドピアノはどんな感じかとても興味があった。

日本人の私としては、ヤマハやカワイを応援したい気持ちがある。

しかし、ウィルヘルムシュタインウェグに触れてその音を聴いたら、残念ながら日本にメーカーさんたち、将来やばいんじゃないかと心配してしまった。

余計なお世話かもしれないけれど。

また、熟練調理師の手入れによる楽器が、スタインウェイ顔負けの音色を奏でるという匠の技にも出会った。

ゴットハンドとは正にこれ。

伝統の技を亡き者にした電子ピアノの罪は小さくない。