ドイツのピアノ教育見聞録

ピアノのレッスンを通して覗いたドイツ事情と試行錯誤の日々の記録。

Übertrittの季節

気がついたら、今年もまたÜbertritt の季節がやってきた。

現時点での小学4年生が、卒業してどの進路に合った学校の5年生になるのかが決定されるのがこのÜbertritt なのだ。

進路は小学校での成績によってほぼ決まる。

私の生徒にも、4年生が何人かいる。

音楽学校の先生たちは、楽器のレッスンをしているだけでもその生徒が5年生でどの進路に進むかが、事前に本人から聞かなくても大体わかるものだ。

私たちは、低学年の生徒たちに当然楽譜の読み方を教えているわけだ。

そんな時、先生の話を聞いて、言われた通りに実践して、指示された通りに宿題をやってくる、当たり前といえば当たり前のことができる生徒はだいたいギムナジウムに進学する。

宿題の練習を、これは難しいから嫌だと言って自分のやりたいことだけやってくる生徒は、レアルシューレ(実科学校)に進学するケースが多い。

外国人の子供でドイツ語にまだ問題があると判断された場合は、ドイツ語集中コースのあるミッテルシューレ(基幹学校)に進学するのは、ここ最近の風潮だ。

要するに、子供の音楽性云々という話ではなく、何かを学ぶということはどういうことか分かっている子供達がギムナジウムに進学する。

時々、うちの子は楽譜を読むのが嫌なので、楽譜なしで教えてくださいという親御さんも存在するが、その子が稀に見る天才的な音感の持ち主であるというケースにはまだ出会ったことがない。

そんな小学四年生たち、既にギムナジウム進学を決めた子が何人かいるが、どのギムナジウムに入学申し込みするかはもう少し考えるらしい。

オープンスクールに参加して最終判断がされるわけだが、うちの子は音楽系ギムナジウムに行っても大丈夫でしょうかと良く質問される。

仲良しのお友達あるいは自分の兄弟姉妹が行ってるからという理由で音楽系ギムナジウムに進学決定する場合は、よく考えておいたほうが良い。

音楽学校では自分の好きなことだけやっていても楽しければそれでいいが、音楽系ギムナジウムではそうはいかない。

自分の好きでない曲も課題曲であるなら練習しなければならないし、音階練習だって必要だ。

現在私の音楽学校の生徒に、お姉さんと同じ学校だからという理由で音楽系ギムナジウムに進学した生徒がいる。

彼女は現在とんでもなく苦労している。

拍子をとってリズムを数えるのが嫌だからだ。

できないわけではないのに。

事前にお母さんからの相談は何もなかったので、彼女の学校でのピアノの成績が今ひとつよくないと相談された際、この子に音楽系ギムナジウムは向いていない、相談があれば私ははっきりそう申し上げましたとお伝えした。

お姉さんも私が一から教えた生徒だが、こちらはピアノを弾くのがとても好きな、才能溢れる女の子だ。

姉妹でもタイプは全く違うのだ。

Übertritt を控えたお子さんをお持ちの保護者の皆様、そういう観点も踏まえた上で、お子さんに楽器のレッスンをおすすめされたらいかがでしょうか?