ドイツのピアノ教育見聞録

ピアノのレッスンを通して覗いたドイツ事情と試行錯誤の日々の記録。

新五年生

ギムナジウムでは、最初の実技試験が終わった。

新入五年生は、初めての実技試験で成績をもらったことになる。

ところで、新入五年生は本当に楽器初心者なのだろうか?

現実には様々なレベルの五年生がやって来る。

既に何年間か楽器のレッスンを受けている子もいれば、音楽系ギムナジウムに進学するので数ヶ月前からレッスンを始めたという子もいる。

そして、学校のレッスンで初めて楽器に触れるのだという子、つまり全くの初心者も沢山いる。


入学前に楽器の経験がある方がいいのか、それとも本当に初心者でもいいのだろうか、という質問をよく受ける。

少なくとも時間に余裕のある小学生のうちに練習する習慣が身についているというのは非常に良いことだ。

それに加えて、自分が本当にその楽器が好きでなおかつその楽器に向いていることを確認しておくのは大事なポイントだ。

ギムナジウムでフルートを選択したけれど、その生徒にはフルートは全く向いていないということが半年後に分かったということもあった。

何しろその子がフルートを吹いても吹いても音がほとんど出なかったのだ。

そこで慌ててピアノに変更したというケースもあった。

本来ならこのような変更は認められていないが、その子の場合は特例が認められるほど絶望的だったらしい。

こういうのは精神衛生上、できれば避けたいパターンだ。


ところで、五年生が初心者でない場合、自分は楽に課題がこなせるから練習しなくてもいいやと、すっかり怠け者になるケースが実は決して少なくない。

反対に、初心者の自分は頑張ってついていかなければと奮起してどんどん伸びていき、気がついたら怠け者の同級生を追い越していたというケースも結構ある。

要は、自分が本当に毎日練習できるほどその楽器を好きかどうかにかかっている。

毎日英語やラテン語の語彙を復習するのと同じ感覚だ。

そして、ギムナジウムのレッスンは、音楽学校のレッスンとは違って、一人一人のペースに合わせたものではないので、才能とやる気の有無にかかわらず、一定期間中に一定の成果を修める必要がある。

そのためにはやはり毎日練習するしか道はないようだ。


そんな様々なレベルの五年生が一時限当たり二人から三人のグループに振り分けられて、ギムナジウムでのレッスンがスタートする。