ドイツのピアノ教育見聞録

ピアノのレッスンを通して覗いたドイツ事情と試行錯誤の日々の記録。

スクールカラー

ギムナジウムで10年間ずっと一緒に働いてきたCさんに、お茶に呼ばれた。

彼女は音楽科の教員であり、ピアノの教員を統括する立場にもいる人だ。

ドイツのギムナジウムには入学定員数というものがない。

わたしの住む街にはギムナジウムが5校ある。各ギムナジウムの校長は、毎年行われる保護者向け合同説明会で、各々の学校のPRを行う。

その後学校ごとにオープンスクールが行われ、入学希望者は定められた期間内に希望のギムナジウムに入学申し込みをする。

そして全員が9月から自分の希望するギムナジウムに通学することになる。

つまり、評判の良い学校には生徒が大勢集まり、そうでない学校には入学希望者が少ししかいないという厳然たる事実を情け容赦なく目の当たりにするわけだ。

ギムナジウムの校長の権限は強大であると同時に責任も重大だ。

校長は学校の特色を地域にアピールするためにあらゆる策を練り、学校の成果を上げていかないと、学校経営に大きな支障を来すことになる。

ギムナジウムは公立学校なのに、まるで日本の私立みたいだなという感想を抱いた私。

(日本の学校関係の方、間違っていたらごめんなさい。)

ともあれ、音楽系と銘打った学校では、音楽科教員の仕事が学校経営に大きな役割を担う事は想像に難くない。

Cさんは、新入生5年生全員をコーラス、オーケストラ、演劇、ダンスの4つのグループに分け、それぞれのグループを直接指導する先生たちと連携して、年度末にはミュージカル上演に持っていく。

5年生だけでこれだけのプロジェクト。

しかもこれはクラブ活動ではない、れっきとした授業の中で成される活動であり、生徒たちは当然成績をつけられる。

音楽なんかにかまけていると数学や英語の成績が落ちるわよ〜という概念は大間違いだ。

この学校からは、アビトゥアの音楽で高得点を修め、大学では医学部に進学するという生徒がザラにいる。

(ちなみに、音楽に秀でている生徒は他の科目の成績も良いというのは、音楽学校で教えている経験からも実感できるのだが、この話はまた別の機会に。)

音楽科の専任教員だけでも7人いるのが音楽系ギムナジウムだ。

Cさん以外の先生のプロジェクトも合わせると、スクールカラーは強烈だ。


ところで、ドイツ人にお茶に呼ばれた場合だが、ドイツ語ではコーヒーを飲みに来ない?という表現をする。

お茶を希望しても構わない。

外せないのが、ケーキだ。

お宅に呼ばれた場合には、必ずといっていいほど複数種類のケーキが準備されている。

それは何を意味するかというと、ケーキのお代わりだ。

日本のミニサイズではなく、どーんとした大きなケーキを最低2つ食べるのがほとんど礼儀だ。

夕飯はいらない。