ドイツのピアノ教育見聞録

ピアノのレッスンを通して覗いたドイツ事情と試行錯誤の日々の記録。

古今クリスマスソング事情

EちゃんLちゃん姉妹が、お家にある古いドイツのクリスマスソングのピアノ曲集を持って来てくれた。

彼女らのお父さんが昔ピアノを習っていた当時の楽譜だ。

ドイツの出版社の楽譜で、ドイツのクリスマスソングとはっきりと表紙に書いてある。

では中を拝見してみよう。

思った通り、Jingle Bellsジングルベルは入っていない。

We wish you a Merry Christmasもない。

英語の歌は1つもなく、全てドイツ語の歌だ。

定番「聖しこの夜」はしっかり入っている。

前記事でも紹介したニコラウスの日を楽しみに待つ歌 Lasst uns froh und munter seinもある。

しかし、知らない歌の何と多いことか!

年配者は知っているのだろうけれど、最近の幼稚園では絶対に歌われていない気がする。

私が教材として使用している初心者用クリスマス曲集は当然だけれど最近の出版物で、モダンな曲も入っているが、ドイツの伝統的な曲も何曲かは必ず入っている。

その中には14世紀から伝承されている曲や、宗教改革で有名なマルティンルターが作詞した歌もある。

しかし、子供達はそれらの歌をあまりよく知らないようだ。

まあこういう現象はドイツだけに限ったことではないのだろうが、何だかとても残念だ。

さて、ドイツ三大Bの一人、ヨハネスブラームスは、「Joseph, lieber Joseph mein 親愛なる私のヨゼフ」という、14世紀のテキストに15世紀ごろメロディがつけられたクリスマスソングに着想を得て、女声とチェロとピアノのための「聖なる子守唄 Geistliches Wiegenlied Op.91-2」を作曲している。

私は昨年のとあるクリスマスチャリティコンサートで、この曲を演奏する機会に恵まれた。

あのブラームスも子供の頃のピアノのレッスンでこの曲を練習したかは知らないけれど、子供の頃から慣れ親しんできたこのメロディにインスピレーションを受けたのかと考えると、最近の子供達がこの歌を知らないまま大人になるのは文化的損失だ!

と考えた私は、今年のクリスマスには、初心者みんなに、子供達の国籍も宗教も問わず、ひたすらこの曲を宿題に出し続けたのである。

😂🤣😂🤣😂🤣😂🤣😂🤣😂🤣

 

クリスマスパーティー

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今日は音楽学校のクリスマスパーティーに参加した。

こちらではクリスマスパーティーというのだが、賛美歌を歌うわけでもお祈りするわけでもなし、どう考えても忘年会という方がぴったりだ。

パーティーは学校内の一室で行われ、参加は自由だ。

グリューワインやビール、クリスマスシーズンには欠かせないレープクーヘンやクッキーの他、校長からピザの差し入れがある。

飲み物やおつまみより、同僚同士のおしゃべりがメインだ。

日本のように会費を徴収するグルメな忘年会を企画しても、きっと誰も参加しないだろうな。

ドイツ人て、そういうところはケチなのだ。

今日は新しい同僚と初めて話す機会があった。

彼はウクライナ出身で、ドイツの音楽大学を出たばかりの若手だ。

26歳かぁ、へぇー、と思った後ガーンと衝撃を受けた。

娘とほとんど同い年か!

😱😱😱😱😱😱😱😱😱😱

ここは毎年新卒が採用されるような職場ではないから、こういう状況に対する免疫がないみたい。

他愛もない世間話の後、クリスマス休暇はウクライナで過ごすの?と聞いてみた。

いや、ドイツで過ごすよ、という答え。

故郷は紛争地帯なので帰れる状況にないと言う。

クリスマスって何だろう。

よく、本場のクリスマスって素敵でしょうねというコメントをもらう。

日本でもクリスマスにはパーティーがあり、サンタがやってくるし、プレゼントも貰える。

今は宗教的見解は抜きにして話をしよう。

最近ではクリスマスマーケットも各地に登場しているらしい。

確かに一見本場のクリスマスに近づいているようだ。

しかしそれらはあくまでクリスマスの本質に付随するものでしかない。

欧米人にとってのクリスマスとは、何をおいても「家に帰ること」だ。

故郷に帰ってこそのクリスマス。

私も留学生時代を思い出した。

当時のクリスマスの想い出は、異邦人としての寂しさと孤独感なしには語れない。

しかし私の場合は家が遠すぎただけだったのがまだ幸いだったんだな。

同僚の具体的なクリスマスの予定は聞かなかった。

みんないろんな想いを抱えているんだな。


コンサート 12月12日18:30

ピアノ連弾の演奏会が終わった。

私が住む市の「水曜日のクラシック」シリーズに、毎年恒例行事のように参加させてもらっている。

今年から半民営のような形態になったらしいけれど、今までと同様に毎週水曜日の夜6時半から1時間ほど、無料でクラシックのコンサートが楽しめる企画だ。

地元のオーケストラのメンバーなどを中心に若手からベテランまで、毎週様々なプロの演奏家が登場する。

広報から会場設営、プログラム作成に本番での進行まで、全て市の職員の方のお世話になるので、出演者は演奏だけに集中できる。

会場自体は収容人数100人程と決して大きくはないが、演奏者と聴衆の距離がかなり近いので、演奏後には聴衆の方から直接お話に来て下さったり、質問を浴びせられたり、聴衆の皆さんも臨場感を楽しんでおられるようだ。

開演前に客席を覗いてみて、私と面識のない方々がたくさん聴きに来て下さっているのを見ると、感謝の気持ちでいっぱいになる。

毎年来てくださる方も何人かいらっしゃるような気がする。

今日も舞台に立てることに感謝して、私自身が楽しんで演奏できますようにと呟いてから、一歩踏み出した。

 

プーランク作曲 「4手のためのソナタ」

l    前奏曲

II   田舎風に

III フィナーレ

 

ドビュッシー作曲「6つの古代碑銘」

1  夏の風の神、パンに祈るために

2 無名の墓のために

3 夜が幸いであるために

4 クロタルを持つ舞姫のために

5 エジプト女のために

6 朝の雨に感謝するために

 

ラヴェル作曲「ラ ヴァルス」

 

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ニコラウス

毎日毎日ジングルベル漬け。

しかも3通りのバリエーション。

まだ3週間これが続くのか〜!

ところで12月6日はニコラウスの日だ。

ドイツでは、この日に聖ニコラウスが良い子のところにプレゼントを持ってくる。

昨日Lちゃんが、「ブーツを綺麗にして寝なきゃ。」と言っていた。

朝起きたらニコラウスからのプレゼントがブーツの中にちゃんと入っていたかしら?

このニコラウスの日を楽しみに待つ歌、

Lasst uns froh und munter sein

が、ジングルベルと並んで一二を争う人気のクリスマスソング。

今年ももう何回歌ったことか!

でも8分音符の導入にも使えるからうんざりもできないな。

ところで、ニコラウスの付き人がクネヒトルプレヒト。

シューマンのユーゲントアルバムでおなじみだ。

クネヒトルプレヒトは、悪い子にお仕置きするためにやってくるドイツ版なまはげ。

しかし私はバイエルンで見たことがない。

ここにはいないのだろうか?

ともあれみんな、数年後にはクネヒトルプレヒトが弾けるように頑張って欲しいわ〜。



先生は訛ってます(笑)!

ギムナジウムでの新入五年生の授業を覗いてみよう。

五年生は大体みんな緊張してやってくる。

新しい学校生活、初めて習う教科に加えて、先生が東洋人!

そりゃあ緊張するだろうよ。

目に見えて外国人だもんね。

最近でこそ外国人が田舎にも増えたとはいえ、十年前に私が初めて田舎のギムナジウムに赴任した当時は、この子たちは東洋人を生まれて初めて見るんじゃないかと思ったっけ。

多分中華料理屋にも一度も行ったことないんだろうな。

何しろクラス全員が休み時間になったというのに私に視線が釘付けという出来事があったから。

私も自分のドイツ語が通じるか思いっきり緊張していたのを思い出す。

採用された時、校長先生のところで「バイエルン州の為に働きます」とかなんとか、そんな感じの宣誓式をしたものだから、尚更プレッシャー。

しかし習うより慣れろ、隣の部屋のロシア人の先生の訛りがすごくてレッスンで何言ってるのかよくわからないと言う生徒がいたから、私も気にせず頑張った(笑)。

これってしかし、凄い状況だな😆。

さて授業。

教師はまず、それぞれの生徒のレベルを把握し、適切な課題を各々の生徒に与えるところから始めていく。

既にレッスンを受けている生徒は当然それなりのレベルに見合った曲を課題として与えるのが定石だ。

全くの初心者には、まずは教材を購入してもらうことになる。

教材に関しては、学校指定のものが存在しない。

各先生がそれぞれのやり方で一番いいと思う教材を指定する。

この辺りの考え方が日本と違って非常に面白い。

先生個人の裁量に全て任されているけれど、目指すところは同じはず。

登山に例えると、受け持ちの先生の好みに合ったルートを辿って頂上を目指すようなものだ。

ギムナジウムでの初心者を対象にした教材について、私が見聞した範囲で紹介していきたい。



発表会

クリスマス発表会の日程が決まり、会場の予約も取れた。

音楽学校では、私は毎年一年に2回発表会を企画開催する。

クリスマス直前と夏休み前だ。

万霊節のお休みが終わった頃からクリスマスまでの6週間、低学年の生徒たちは毎年ひたすらクリスマスの歌を弾きたがる。

ドイツの伝統的なクリスマスのメロディから知らない人を捜すのに苦労しそうなジングルベルまで、宗教や人種の違いを乗り越えて、子供たちはみんな面白いほど一生懸命だ。

少しは世界平和に貢献してるかしらん?

さて、今回の会場は市立博物館内のバロック様式の広間だ。

少しアンティークにも見えるグランドピアノが設置されている。

クリスマスにはピッタリの雰囲気。

音楽学校を通してホールを予約し、会場設営に出向く必要はない。

日本では、発表会用に会費がかかると聞いた。

具体的に、何にお金が必要なのだろうか?

今度、日本で同業の友人に聞いてみようと思った。

新五年生

ギムナジウムでは、最初の実技試験が終わった。

新入五年生は、初めての実技試験で成績をもらったことになる。

ところで、新入五年生は本当に楽器初心者なのだろうか?

現実には様々なレベルの五年生がやって来る。

既に何年間か楽器のレッスンを受けている子もいれば、音楽系ギムナジウムに進学するので数ヶ月前からレッスンを始めたという子もいる。

そして、学校のレッスンで初めて楽器に触れるのだという子、つまり全くの初心者も沢山いる。


入学前に楽器の経験がある方がいいのか、それとも本当に初心者でもいいのだろうか、という質問をよく受ける。

少なくとも時間に余裕のある小学生のうちに練習する習慣が身についているというのは非常に良いことだ。

それに加えて、自分が本当にその楽器が好きでなおかつその楽器に向いていることを確認しておくのは大事なポイントだ。

ギムナジウムでフルートを選択したけれど、その生徒にはフルートは全く向いていないということが半年後に分かったということもあった。

何しろその子がフルートを吹いても吹いても音がほとんど出なかったのだ。

そこで慌ててピアノに変更したというケースもあった。

本来ならこのような変更は認められていないが、その子の場合は特例が認められるほど絶望的だったらしい。

こういうのは精神衛生上、できれば避けたいパターンだ。


ところで、五年生が初心者でない場合、自分は楽に課題がこなせるから練習しなくてもいいやと、すっかり怠け者になるケースが実は決して少なくない。

反対に、初心者の自分は頑張ってついていかなければと奮起してどんどん伸びていき、気がついたら怠け者の同級生を追い越していたというケースも結構ある。

要は、自分が本当に毎日練習できるほどその楽器を好きかどうかにかかっている。

毎日英語やラテン語の語彙を復習するのと同じ感覚だ。

そして、ギムナジウムのレッスンは、音楽学校のレッスンとは違って、一人一人のペースに合わせたものではないので、才能とやる気の有無にかかわらず、一定期間中に一定の成果を修める必要がある。

そのためにはやはり毎日練習するしか道はないようだ。


そんな様々なレベルの五年生が一時限当たり二人から三人のグループに振り分けられて、ギムナジウムでのレッスンがスタートする。