クールジャパン
今年度より、ドイツ人大学生M君が私のところでレッスンを受けることになった。
彼はもう何年もピアノを習っているので、かなり難易度の高い曲が弾ける。
初めてのレッスンでは緊張した面持ちで、自分の好きな曲を演奏してくれた。
なんと、久石譲作曲の「千と千尋の物語」からの一曲だ。
彼は大の日本アニメファンだ。日本にも行ったことがあるという。
オタクという言葉のない時代からアニメファンだった私は狂喜乱舞した。
きっかけはどうあれ、日本を訪れ、その文化をもっと知りたいと思ってくれる外国人がもっと沢山増えますように。
来週からは、「Angel beats!」のテーマを練習したいらしい。
最近はアニメから遠ざかっていた私も、M君から大いに刺激をもらえそうな予感がする。
所変われば
久々に再会した生徒達。
Sちゃんは、一家4人で日本旅行を満喫してきた。
私の出身地、某古都へも足を運んでいる。
「楽しかった。日本が大好き!」と言ってくれると、本当に嬉しい。
L君は、ドイツ生まれでドイツ育ちだが、彼のご両親は双方ともに、某国出身である。
彼らは夏休み6週間たっぷりと、祖国に帰省した。
L君のお母さんは、帰省中もL君にピアノの練習を続けさせたかった。
しかし、お母さんの実家にはピアノがない。
そこで、おじいちゃんの計らいで、地元の音楽学校で毎日ピアノのレッスンを受け、練習できる運びとなった。
L君は、自分の楽譜を持参して現地でのレッスンに臨んだ。
バッハ、モーツアルト、シューマン、ショパンなどの所謂大作曲家の名曲を集めた、ドイツのピアノの先生がレッスンでよく使用する人気の曲集である。
その本を一目見た現地の先生は、それを「くそみそ」にこき下ろしたそうだ。
( 某国語→ドイツ語→日本語に訳しているため、鉤括弧でくくっておいた。)
「こんな曲は、某国では6歳児が軽々と弾きこなすレベル」なんだとか。
ちなみにL君は10歳だ。
6歳児、小学一年生の生徒がベートーベンのソナタやシューマンのトロイメライ、ショパンのマズルカ等を弾きこなしてくれたら、私は超うれしいんだけど。
「しかも、こんな風に弾かないといけないって言われたんだ!」と、L君がとったポーズは、肩を怒らせ、肘を持ち上げた、見たこともないものだった。
「先生はいつも大声で怒鳴ってるんだ。だから僕は、一週間でやめちゃったよ。その後ちっとも練習してないんだ!」
うんいいよ、君はピアノよりももっと大事な経験をいっぱいしてきたはずだから。
所変わればピアノの指導法も変わる、という一例としておこう。
レッスン禁止?
新学年度早々に、校長から緊急連絡があった。
ある生徒に対するレッスン禁止令だ。
昨年度の授業料が滞納されているので、その生徒が来てもレッスンしてはいけないというお達しだ。
私の勤めている音楽学校は市立である。
ドイツ語では、städtische Musikschule という。
市からの多大な公的資金で経営が援助されている。
生徒一人に掛かる必要経費の半額は、公的資金で賄われている。
親が払う授業料とは、必要経費の半分でしかない。
複数の子供をレッスンに通わせる家庭には、割引制度が導入される。
しかも、生活保護を受給している家庭の場合は、授業料全額免除される。
簡単に言えば、レッスン代がとてつもなく安いのだ。
今回の授業料滞納というのは、非常に珍しいケースだ。
さて、一体どうなるのだろうと校長からの連絡を待っている間に、ふと、昔のことを思い出した。
以前自宅でレッスンしていた生徒に、お月謝を踏み倒されたという苦い経験だ。
そうこうするうちに、その生徒の昨年度の授業料は無事に振り込まれ、新年度のレッスンをスタートさせることができた。
授業以外の雑事に煩わされないで済むという環境は、なんて有難いのだろう。
授業料の取立てに、税金が投入されたのだ。
音楽家も音楽教師も、霞を食っては生きていけないのだからね。
ドイツ式職場での誕生日の祝い方
今日は同僚Aさんの誕生日だ。
音楽学校の職員室の机の上には、Aさんからの手作りケーキが差し入れられていた。
そう、ドイツでは、お誕生日を迎えた本人が、他の人たちを招待するのが一般的だ。
日本とは正反対だ。
職場にケーキの差し入れがあると、今日は誰かの誕生日だとすぐにわかる。
以前、全体会議の日に誕生日を迎えた同僚がいた。彼女は大きなケーキを2つ焼いて持ってきた。
ちなみに、お誕生日ケーキが手作りであるというのは、ドイツ人にとっては絶対に譲れない大事なポイントだ。
即興で歌われるHappy Birthday のメロディーが多声部で豊かにハモっているのを聞く度、みんな自分の仕事が好きなんだなぁって、微笑ましい気分になる。
豊かな人生を送るために
ドイツの子供達は、学校の授業の後に、たくさんの習い事の予定がある。
水泳、体操、テニス、サッカー、バレエ、乗馬、社交ダンス、アイススケートにアイスホッケーなどのスポーツと、楽器や合唱などの音楽のレッスンを1週間の予定に組み込むのが一般的だ。
スポーツのトレーニングは、大抵週3回くらい予定されているものも多い。
学校の宿題が沢山あっても、あるいは試験前で忙しくても、よほど高学年の生徒でない限り、きちんと習い事に行くように、親が指導する。
学校の勉強だけが人生ではない、趣味を持つことは人生を豊かにすることだという哲学がある。
今日はドラッグストアで玄米酢を発見!
私の人生も少し豊かになった(笑)。
新年度スタート!
今日から新年度が始まった。
私の住むバイエルン州では、新年度の始まりは、いつも火曜日と決まっている。
日本のように全校集会のようなものはなく、学校に行って自分の名前が掲示されているクラスに行き、担任の先生から時間割をもらう。
ほぼそれだけで今日は終わりだ。
音楽学校Musikschule のレッスンも今日から始まる。
昨年度も火曜日に定期レッスンのあった生徒たちが、とりあえず今日もやって来る。
自分の学校で午前中に貰ったばかりの時間割表を持って、今度は音楽学校の楽器の先生とこの一年のレッスンを何曜日の何時にするか、話し合う。
毎年恒例のイベントというわけではないのだが、音楽学校の教師にとって、この1週間は時間割を組むためだけに時間を使うと言っても過言ではない。
まるでパズルを組み合わせるような作業だ。
早く全体像が見えるようにと祈るしかない。
そんなこちらのストレスとは無関係に、生徒たちがやって来た。
皆日焼けして元気そうだ。
特に低学年の生徒たちは、楽しかった夏休みの様子を一生懸命話してくれる。
ギリシャ、クロアチア、フィンランド、オーストリアでのバカンス。
昨日旅行から帰って来たばかりという強者もいた。
6週間の夏休みの間、みんなほとんど家にいないみたいだ。
家族旅行以外にも、子供達だけでのキャンプやサーカスの講習など、予定がビッシリ詰まっている。
練習した?と聞いたら笑ってごまかす子もいた。
しかし、レッスンを始めると、皆集中して一生懸命課題に取り組む。
ドイツ人は、子供の頃から遊びと勉強の切り替えが出来るように育てられている。
ドイツ手作りライフ 其の弐
同僚のEさんからお裾分けを頂いた。
彼女の庭で採れたフルーツの山、総量8キロを超える。
彼女のお庭には、3メートルを超える高さの林檎、梨、プラムの木がそれぞれ2本以上植わっている。
それに加えて赤白のぶどうの木も数年前に植えられた。
豊作の林檎は、自家製りんごジュースに変身する。自家製林檎を持っていけば、ジュースを絞ってくれる工場があるそうだ。
なんだかスケールが大きすぎてついていけない。
その他の林檎は来年1月まで地下室で保存可能だとか。
スーパーで林檎のパックなど買う必要は全くないらしい。
庭に果樹があるのはドイツではかなり一般的だ。
住宅街の中を散歩しているだけで、あちこちのお庭で、甘い芳香を漂わせながら収穫されるのを待っている果物たちが目に映る。
お庭の手入れが苦手な私だが、この時期だけは、果樹のあるお庭が羨ましくてたまらない。
実は、数年前に、スーパーで売れ残っていた林檎の木を自宅の庭に植えてみた。
Zwergapfel、直訳すると小人の林檎という、膝丈くらいまでしか大きくならない種類だ。
今年初めて花が咲き、数個だけだが初収穫できそうだ。
頂いたプラムでケーキを焼いてジャムを作った。
葡萄はなんと大根の漬物という和の保存食に変身だ。
葡萄自身がたぶん一番ビックリしているだろうな。