レッスン禁止?
新学年度早々に、校長から緊急連絡があった。
ある生徒に対するレッスン禁止令だ。
昨年度の授業料が滞納されているので、その生徒が来てもレッスンしてはいけないというお達しだ。
私の勤めている音楽学校は市立である。
ドイツ語では、städtische Musikschule という。
市からの多大な公的資金で経営が援助されている。
生徒一人に掛かる必要経費の半額は、公的資金で賄われている。
親が払う授業料とは、必要経費の半分でしかない。
複数の子供をレッスンに通わせる家庭には、割引制度が導入される。
しかも、生活保護を受給している家庭の場合は、授業料全額免除される。
簡単に言えば、レッスン代がとてつもなく安いのだ。
今回の授業料滞納というのは、非常に珍しいケースだ。
さて、一体どうなるのだろうと校長からの連絡を待っている間に、ふと、昔のことを思い出した。
以前自宅でレッスンしていた生徒に、お月謝を踏み倒されたという苦い経験だ。
そうこうするうちに、その生徒の昨年度の授業料は無事に振り込まれ、新年度のレッスンをスタートさせることができた。
授業以外の雑事に煩わされないで済むという環境は、なんて有難いのだろう。
授業料の取立てに、税金が投入されたのだ。
音楽家も音楽教師も、霞を食っては生きていけないのだからね。