ドイツのピアノ教育見聞録

ピアノのレッスンを通して覗いたドイツ事情と試行錯誤の日々の記録。

JuMu Landes 2019 その六➖総括➖

ホーフに滞在している間、できる限り私の勤務する音楽学校の生徒或いは同じ地元からの参加者の審査に立ち会い、審査員の講評を聞く機会に恵まれた。

今年の地区予選の審査は厳しいという評判だった。

蓋を開けてみると、地元からの参加者は今年は全員が州予選で入賞している。

しかも3位はたった一グループで、他は皆それ以上の成績だ。

以前は州予選で3位入賞できない参加者もいたのである。

すなわち、今年は本当の精鋭が選ばれて州予選に進出したということになる。

そしてその精鋭の中でも将来プロを目指す受賞者は、たった2組だ。

あとは皆、音楽が楽しいから続けているという青少年ばかりということになる。

もちろん現在10歳の参加者が数年後になんと答えているかはわからないけれど。

地元では州予選2週間前に、州予選進出壮行演奏会とでもいえるコンサートが催されている。

その時に、参加者は皆金一封のお小遣いが貰えて、さらに聴衆による人気投票で選ばれた参加者にはボーナスまで出る。

皮肉なことに、この聴衆賞を受賞したグループは州予選で3位に終わり、マラソン大会に参加するために州予選直前の練習演奏会をキャンセルしていたグループが2位に入賞した。

この子たち本当に大丈夫なのかなと先生が最後まで心配していたピアノと管楽器のデュオだ。

私の個人的な見解だが、ミスのない演奏をすることを目指すより、曲の美しさを感じて表現しようと努力している演奏の方がドイツ青少年音楽コンクールでは圧倒的に評価されている。

審査員の一人である某音楽大学のピアノの教授があるグループの批評の中で、「あなたたちには何かを表現しようという強い意思がある。」と発言された。

ここではミスがあるかどうかではなく、生徒たちの音楽性が評価の対象となっている。