ドイツのピアノ教育見聞録

ピアノのレッスンを通して覗いたドイツ事情と試行錯誤の日々の記録。

良い伴奏とは?

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


2019年はどんな年になるのかな、とのんびりお正月三が日を過ごそうと思っていたのだけれど、今年も騒がしくなること間違いなし。

それは一月二日、昔の生徒Nからの連絡で始まった。

一月後に迫ったJugendMusiziert ドイツ青少年音楽コンクール地区予選のバイオリンソロ部門に参加予定のNは、伴奏者を緊急に探しているのだという。

今頃どうしてと聞くと、予定していたピアニストにキャンセルされたというのだ。

そこで私が彼女の伴奏を出来ないかと、切羽詰まって聞いてきたというわけだ。

Nは将来プロを目指すバイオリニストで、現在はミュンヘン音楽大学のJungstudent 特待生であり、JugendMusiziert Bundeswettbewerb ドイツ青少年音楽コンクール全国大会の毎年の常連だ。

二年前まではNは私のピアノの生徒だったので、お互い気心も知れている。

彼女はちょうど三年前、私が伴奏した全国大会ソロ部門で惜しくも2位、翌年の全国大会デュオアンサンブル部門では堂々の一位に輝いた実力者だ。

ふーん、あなたにもそんなアクシデントが起こるのねぇと、新年の挨拶もそこそこにどうしたことかと知恵を絞る。

結論として、私がピンチヒッターとして彼女の伴奏をすることは難しい。

結局リハーサルするための予定が全く合わないのだ。

彼女は今年Abiturアビトゥアを控え、しかも週末にはミュンヘン音楽大学に通っている。

しかも気分転換のフィギュアスケートの予定もある。

ドイツ人の高校生は予定がぎっしり詰まっている。

この状況でもそれ全部やるの?と呆れ返る私だが、私も既に地区予選で二人のバイオリンの生徒を伴奏する予定が決まっているので、時間の余裕はない。

Nには他の信頼できるピアニストの連絡先を教えてあげた。

彼女はきっとなんとかするだろう。


ところで、毎年地区予選前になると、必ず伴奏者が見つからないという騒ぎを聞く。

キャンセルされたとか、今まで探していなかったとか色々だ。

伴奏、特に子供の伴奏は決して簡単ではないのだが、世の中の大半の人は、伴奏なんてすぐできると思っているようだ。

侮ってもらっては困る。

良い伴奏者は、子供の演奏をさらに美しく聞かせるだけでなく、子供の弱点をカバーして演奏中の子供に安心感を与え、音楽的インスピレーションを授けて次の発達段階に子供を誘導していくことができる。

しかしそれは、経験を積んだ伴奏者でも神経を使う仕事なのだ。

コンクール地区予選を聴いていて、いかに良い伴奏者が少ないか、音楽の本場ドイツでも、田舎ではいろんなことがまかり通っているのを感じさせられたりもする。

素晴らしい才能の片鱗を持つ生徒の伴奏が、足を引っ張っているとしか思えないこともあった。

少なくとも地区予選に参加する子供たちは、できれば次の州予選に進むことを目標にしている。

そんな時、子供の実力は甲乙付けがたくても、良い伴奏者に恵まれた場合には高得点を貰える確率が非常に高い。

音楽はソロも伴奏もまとめて音楽だからだ。


今日は初仕事、コンクール参加者バイオリニストJちゃんとの初リハーサルだ。

初めての割には手応え十分、順調な滑り出しだったと言える。

これから本番まで、週に一回のペースでリハーサルの予定を組んだ。

ところで、今日のリハーサルはまだ冬休み中の音楽学校で行ったのだけれど、行ってみて驚いた。

あちこちの部屋から音がする。

コンクール参加者はみんなレッスンに来ているようだ。

ちなみに、ドイツの普通の企業では、休日出勤なんてあり得ないらしいのに。